「光がなければ、闇もまた存在しません。けれど、一度、光を生み出せば、闇もやはりそこにうまれます。たった一つの光から無限の闇が生まれるのです」
「ならば彼は」と僕は呻くように聞いた。「彼はどうすればよかったのですか?」
「その闇の深さに怯える前に、それを照らす光に目を向けるべきだったのです。闇から生まれる闇などないのです。すべての闇は光から生まれます。違いますか?」
そうなのかもしれない。違うかもしれない。わからなかった。
「挑むのですよ」
俯く僕を慰めるように、老婆は優しく言った。
「挑む?」と僕は聞き返した。
「ええ。挑むのです。彼女にでもなく、その男にでもなく、ただ自分の中の闇に挑むのです。そこにまだ光があるのなら」と老婆は言った。「挑み続けること。闇から光を守るには、それしかないのです」
(本多孝好 FINE DAYS)
夫を亡くした恋人と過ごす中で感じる不安、いまも恋人の中に生き続けるその人に対する嫉妬など、主人公が抱く闇をランプシェードにまつわる物語によって老婆がさとす本多孝好の短編。とても好きなお話です。
闇に目を奪われ捕われるのではなく、また闇を見ないのでも、無視するのでもない。全部受け入れた上で、大切なこと、もともとの大きな光、最初の大切な気持ちをいつまでも忘れずにいることが挑むことだと感じました。
FINE DAYS (祥伝社文庫)
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本多 孝好
祥伝社
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おすすめ度の平均: 

多彩
リズムよく読ませる。
本多氏の描く女子は、断然かっこいい。
読書の楽しみを広げてくれる一冊
『シェード』:そこにひもとかれている主人公の決意に深く胸を打たれた

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